トレンドマイクロでは2019年における国内外での脅威動向について分析を行いました。特に国内での脅威を振り返った場合、個人利用者が直接の被害を受ける攻撃としては、9月以降に顕著化した国内ネットバンキングのワンタイムパスワード突破を狙うフィッシング攻撃に加え、利用者のカード情報詐取を狙うECサイト改ざんの攻撃などが挙げられます。また、特に法人組織に被害を与える攻撃として、2019年前半には法人利用者におけるランサムウェア被害が顕在化しました。そして、10月以降には、メール経由で拡散する「EMOTET」の攻撃が、最も大きな脅威となりました。これらの攻撃の中からは「人の弱点を利用し常識を覆す攻撃」と「高度な攻撃手法の一般化」が見られています。
続きを読むサイバー犯罪者による攻撃メールでは、受信者を騙し、不正サイトへ誘導したり、添付ファイルを開かせたりしようとする手口が日常的に使用されています。中でも、その時々に注目を集めている話題に便乗する手口は、大きなイベントの開催や事件発生の度に見られる常套手段です。今、世界的に注目されている事件と言えば、中国の武漢で発生したとされる新型コロナウイルス(2019-nCoV)でしょう。その影響は中国とその周辺諸国から世界的に広がっており、世界保健機関WHOは「世界的な緊急事態」を宣言、日本の厚生労働省も公式勧告を出しています。サイバー犯罪者がこのように注目される話題に便乗することは、ある意味当然のことですが、トレンドマイクロでは実際に、この新型コロナウイルスの話題に便乗する手口を連続して確認しました。
図1:新型コロナウイルスに便乗するテキストメッセージの例
(2020年2月確認の内容から再構成)
2019年にも様々なサイバー脅威が登場し、利用者の安全を脅かしました。トレンドマイクロでは、過去1年間のサイバー脅威動向調査として、2019年1月~11月に発生したサイバー脅威を分析しました。結果、利用者に被害を与えた脅威の傾向として、一般の利用者が持つ「セキュリティの常識」、言い換えれば「これは安全」という利用者側の思い込みを覆すサイバー犯罪の被害が顕著化した1年間であったと結論付けました。攻撃手法自体は既に以前から発生しているものであっても、一般の利用者にはまだ認識がない、その攻撃手法が拡大した、などの理由により、利用者にとっての「安全」の思い込みを覆す攻撃の被害が顕著になったものと言えます。本記事では「この常識を覆すサイバー犯罪」の観点から、2019年の日本におけるサイバー脅威動向の速報をお伝えします。
図1:2019年、国内の個人と法人における三大脅威トピック
トレンドマイクロでは2019年第3四半期(7~9月)における国内外での脅威動向について分析を行いました。この第3四半期、国内ではECサイトやクラウドサービス等で利用される認証や決済に関連した脅威が複数顕著化しました。特に、国内ネットバンキングの二要素認証の突破を狙うものと考えられるフィッシングサイトの攻撃が9月に拡大、また、脆弱性を利用したECサイト改ざんを発端に利用者のクレジットカード情報が詐取される被害事例の公表も相次ぎました。
図1:メールで通知されるワンタイムパスワードを入力させる
フィッシングサイトの例(2019年8月確認)
トレンドマイクロは、スパムメールに記載されたリダイレクトURLを利用して拡散するバンキングトロジャン「Trickbot」の亜種(「TrojanSpy.Win32.TRICKBOT.THDEAI」として検出)を確認しました。この亜種は、「url?q=<不正なURL>」のようなクエリ文字列(URLパラメータ)を利用してユーザを不正なURLにリダイレクトします。そして、この特定の事例では、「hxxps://google[.]dm:443/url?q=<TrickbotのダウンロードURL>」のようにリダイレクト元のURLとしてGoogleが利用されました。正規URLからリダイレクトするこの手口は実際にスパムメールが届いた際、Trickbotをブロックする可能性のあるスパムフィルタを回避することに役立ちます。
(さらに…)
2018年において、ランサムウェアによる攻撃は減少傾向にありましたが、最近は再び元の勢いを取り戻しつつあるようです。しかしながら、今回確認されたランサムウェア攻撃は以前のようなばらまき型の攻撃に比べると標的を絞っているように見受けられます。身代金要求文書に社名が記載された米国の飲料会社に対するランサムウェア攻撃のニュースが発表された直後、トレンドマイクロは米国の製造会社を攻撃した暗号化型ランサムウェア「BitPaymer」の亜種(「Ransom.Win32.BITPAYMER.TGACAJとして検出)を調査しました。飲料会社の事例と同様に身代金要求文書に社名が記載されていたことから、この事例も標的型の攻撃だった可能性があります。
(さらに…)
トレンドマイクロは、2017年9月にも、古くからあるオンライン銀行詐欺ツール「EMOTET(エモテット)」がそのような不正なマクロを利用した手法で金融機関以外の業界や新しい地域へと対象を拡大する活動について報告しました。
不正なマクロと PowerShell を利用する「EMOTET」の感染フロー
トレンドマイクロは、2014年のクリスマス商戦前に、新しい POSマルウェアを複数確認しましたが、その際に報告しなかったことが 1点ありました。それは、有効な証明書を利用してファイルにデジタル署名がされていたことです。弊社の調査によると、POSシステムを狙ったこうした攻撃は巧妙化してきており、コード署名や高度な暗号化はますます一般的になってきています。弊社ではまた、この POSマルウェアが不正プログラム「Anunak」に関連するサイバー犯罪者集団と関係していることを確認しました。「Anunak」はサイバー犯罪者集団「Carbanak」とも関係していることをセキュリティ企業「Fox-IT」が報告しています。
続きを読むトレンドマイクロは、Windows レジストリ内のすべての不正なコードを隠ぺいする不正プログラムを確認しました。この手法により、不正プログラムは検出を回避し、不正活動を隠ぺいすることが可能になります。「TROJ_POWELIKS.A」として検出されるこの不正プログラムは、実行されるとファイルをダウンロードし、PC上に感染します。この不正プログラムに感染した PC は、別の不正プログラムに感染される恐れがあり、被害はさらに拡大します。また、この不正プログラムは、PC上の情報を収集する機能があるため、サイバー犯罪者が別の攻撃を開始するのに利用される可能性があります。
続きを読む2014年上半期におけるスパムメールの数は、2013年上半期と比較して 60% 増加しました。トレンドマイクロでは、この増加について、いくつかの要因を挙げています。1つは、「DOWNAD」の感染拡大や、「MYTOB」などのスパムメール送信機能を備えた不正プログラムを添付したスパムメールが着実に増加していることです。また、感染を拡大している「UPATRE」やオンライン銀行詐欺ツール「ZBOT」が、不正プログラムをダウンロードする感染媒体として、スパムメールを利用していることも要因の 1つでしょう。2013年のスパムメールの動向として、弊社は、不正プログラム拡散のためにスパムメールが引き続き利用されるだろうと予測しましたが、これは現在も事実のようです。
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