標的型サイバー攻撃キャンペーン「BLACKGEAR」(別名:「Topgear」、「Comnie」)におけるサイバー諜報活動は、バックドア型マルウェア「Protux(プロタックス)」の確認状況に基づくと、少なくとも2008 年までさかのぼることができます。BLACKGEAR は、日本、韓国、台湾の公的機関、通信企業、その他の技術系企業を標的としてきました。例えば 2016 年の活動では、バックドア型マルウェア「Elirks」を始め、さまざまなマルウェアやツールを利用し、日本の組織を攻撃していたことが確認されています。BLACKGEAR の攻撃者は、独自のツールを開発し、非常に組織的な活動を行います。最新の攻撃ではそれらのツールに微調整が加えられていることが確認されました。
続きを読む本ブログで 2017 年 2 月に解説したように、2016 年には、主要な脆弱性攻撃ツール(エクスプロイトキット、EK)の活動停止や減少が確認されました。しかし、エクスプロイトキットの活動は完全に停止したわけではありません。「malvertisement(不正広告)」や、スパムメール内の不正リンク、あるいは侵害した Web サイトのように、以前と同様の手口の利用を続けているものの、最近再び脅威状況の中で重要な位置を占めるようになってきました。「Rig EK」、「GrandSoft EK」、そして非公開の「Magnitude EK」がその良い例です。これらのエクスプロイトキットは、比較的最近確認された脆弱性を利用し、仮想通貨発掘マルウェアやランサムウェア、ボットのローダ、そしてオンライン銀行詐欺ツール(バンキングトロジャン)などのマルウェアを送り込みます。
続きを読むトレンドマイクロでは、2017 年の 1 年間に確認した、日本国内における「標的型サイバー攻撃」に関しての分析を行いました。2017 年を振り返ると、標的型サイバー攻撃の重大な被害に関する公表や報道はほとんどありませんでした。この事実だけを見ると、国内での標的型サイバー攻撃の脅威は完全に沈静化しているように思えます。しかし、トレンドマイクロが 2017 年に行ったネットワーク監視の中では、全体の 71%で 標的型サイバー攻撃の疑いが警告されており、攻撃自体は水面下で継続している状況と言えます。
図:トレンドマイクロが 2017 年に行ったネットワーク監視における標的型サイバー攻撃の疑いを示す検出の割合
2017 年 5 月、サイバー犯罪者の活動を支援する不正なウイルス検索サービス「Scan4You」を運営していた主犯格の 2 名、Ruslans Bondars および Jurijs Martisevs 両容疑者がラトビアで逮捕され、米連邦捜査局(FBI)によって米国に送還されました。この逮捕の後、Scan4You はサービスを停止しています。ヴァージニア州連邦裁判所は、2018 年 5 月、この 2 名に対し有罪判決を下しました。
トレンドマイクロの脅威リサーチ部門「Forward-Looking Threat Research(FTR)チーム」は、2012 年に Scan4You の調査を開始し、2014 年以降は、この件を担当する FBI の捜査官と密に連絡を取り合ってきました。弊社は、問題のサービスが停止するまで、調査から得られた知見を 5 年以上にわたって FBI に提供してきました。
続きを読む「Rig Exploit Kit(Rig EK)」のような脆弱性攻撃ツール(エクスプロイトキット)を利用した攻撃は、通常、改ざんされた Web サイトを起点とします。攻撃者は、不正なスクリプトやコードを Web サイトに埋め込み、アクセスしたユーザをエクスプロイトキットのランディングページにリダイレクトします。しかし、2017 年 2 月から 3 月頃に実施されたサイバー攻撃キャンペーン「Seamless」では、非表示にした iframe を経由してランディングページにリダイレクトしていました。iframe は Web ページの中に別のページのコンテンツを埋め込むために使用される HTML 要素です。
続きを読むEC サイトによるインターネット取引の急拡大によって、国内でのクレジットカード(以下、カード)利用は年々増加しており、2020 年に行われる東京オリンピックへの訪日客によるカード決済の急増も予測されます。このように国内でのカード決済のさらなる普及が見込まれている一方で、トレンドマイクロが 2017 年に実施した調査では、卸・小売業の国内企業のうち、34.3% が POS システム・ネットワークでのインシデントを経験し、35.2% が EC サイトでのセキュリティインシデントを経験していることが分かっています。実際、国内では EC サイト等を含む公開サーバからカード情報が漏えいするといった事例が複数公表され、一方海外では POS システムに感染したマルウェアによってカード情報が窃取されるといった被害事例が顕著になっています。こうした背景から、より安全なカード利用の実現を目的に、2018 年 6 月 1 日に「改正割賦販売法」が施行されました。その結果、カード情報を取り扱う法人組織では、「カード情報の適切な管理」や「不正利用防止」のために必要な措置をとることが求められるようになりました。
続きを読む次世代の移動通信システムとして大々的に宣伝されている 5G は、すでに高速なネットワーク通信を提供している 3G や 4G のような現行の移動通信システムよりも、さらに高い信頼性と高速な通信を可能にします。5G の通信速度は数ギガビット毎秒(Gbps)程度、平均ダウンロード速度は 1 Gbps 程度になると見込まれています。従来の通信システムが世代を重ねながら改善を続けて来たことは、スマートフォンやその他の広く使用されているモバイルネットワーク機器の利便性の向上からも明らかですが、大容量データの送信が可能な 5G は、それらに加え「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」デバイスにも恩恵をもたらすでしょう。
続きを読むセキュリティリサーチャの報告によると、少なくとも世界 54 カ国で 50 万台以上の家庭用または小規模オフィス用ルータが「VPNFilter」と名付けられたマルウェアに感染しました。VPNFilter は、感染機器の管理、ファイルや認証情報の収集、「監視制御データ収集(Supervisory Control And Data Acquisition、SCADA)」プロトコルの傍受、機器を使用不可にする「kill」コマンドの実行などの機能を備えています。この kill コマンドは、個別の機器で実行することも、複数の機器でまとめて実行することも可能です。VPNFilter の活動は 2016 年から確認されていましたが、2018 年 5 月上旬にウクライナを中心として大量の感染が確認されたことを受け、その危険度の高さからリサーチャがレポートの公開に踏み切りました。
続きを読むトレンドマイクロは、弊社も提携している、マルウェアや URL を分析する無料オンラインスキャンサービス「VirusTotal」を利用してマルウェアのテストを行っていると見られる一連のファイル提出活動を確認しました。ファイル名や提出元情報から、これは明らかにモルドバ共和国の同一のマルウェア開発グループによるテスト目的の提出だと推測されます。提出されたファイルは、Java または JavaScript で作成されたマルウェアをダウンロードおよび実行するダウンローダ「DLOADR(ディーローダ)」(「JS_DLOADR」および「W2KM_DLOADR」として検出)で、迷惑メールに添付した不正な文書ファイルを介して拡散することを意図していたようです。
DLOADR がダウンロードするマルウェア(「TROJ_SPYSIVIT.A」および「JAVA_ SPYSIVIT.A」として検出)は、感染 PC を乗っ取るために正規の「Remote Access Tool(RAT)」である「VisIT」をインストールします。さらには、ユーザが Edge または Chrome ブラウザ上で入力した情報をバックドア活動によって窃取する不正な拡張機能もインストールします。
正規 RAT の認証情報を窃取して悪用する手口は新しいものではなく、以前にも、マルウェア「TeamSpy」を拡散する迷惑メール送信活動で確認されています。TeamSpy は、正規リモートデスクトップツール「TeamViewer」を悪用し、感染 PC を遠隔から操作するマルウェアです。このように、「Chrome WebDriver」や「Microsoft WebDriver」のようなオープンソースツール、そして正規「Application Program Interface(API)」の悪用は、新しい手口ではないものの、依然として確かな脅威となっています。
続きを読むいよいよ今日施行される EU 一般データ保護規則(GDPR)に関して、企業における認知や対策が進んでいない現状からいくつかのリスクが考えられる一方で、サイバー犯罪の観点で考えたときに外せないのが、「GDPR に関連したサイバー犯罪は起きるのか?」という疑問です。GDPR 施行に合わせて、遅れる認知や対応に起因したリスクと、施行に関連してどのようなサイバー犯罪が起きる可能性があるのかを考察してみます。
EEA 参加国の個人情報を取り扱っている企業においても、GDPR への対策はおろか認知・理解が進んでいない実態については先日解説した通りです。近年、国内でも個人情報保護法や割賦販売法の改正といった個人情報の取り扱いに関連した法規制の整備が進んでいますが、海外発の法規制で国内法人組織に影響を及ぼすものがあるということ自体想定していなかたったという方たちも少なくないかもしれません。結果的に、GDPR 自体の認知度の低さにも影響していると推測されます。
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