2017年5月中旬、「EternalRocks(「TROJ_ETEROCK.A」として検出)」と呼ばれる新しいマルウェアが確認されました。このマルウェアは、ハッカー集団「Shadow Brokers」によって米国の「National Security Agency(国家安全保障局、NSA)」から流出した脆弱性やツールを利用しています。暗号化型ランサムウェア「WannaCry」が利用した脆弱性「EternalBlue」およびバックドアツール「DoublePulsar」に加えて、同じ経緯で流出した「EternalChampion」、「EternalRomance」、「EternalSynergy」、「ArchiTouch」、「SMBTouch」を利用しています。これらのほとんどは Windows OS のファイル共有プロトコル「Server Message Block(サーバメッセージブロック、SMB)」の脆弱性を狙ったものです。
続きを読む「脆弱性攻撃ツール(エクスプロイトキット)」の活動は 2016年下半期より、「Magnitude Exploit Kit(Angler EK)」、「Nuclear EK」、「Neutrino EK」、「Neutrino」、「Rig EK」を中心に減少傾向を示しています。しかしこれは、エクスプロイトキット自体が活動を諦めたわけではありません。「Astrum EK(別名:「Stegano EK」)」は、従来から存在するあまり目立たないエクスプロイトキットとして知られていますが、最近トレンドマイクロでは、このエクスプロイトキットの更新を複数回確認しました。
「Astrum EK」は、不正広告キャンペーン「AdGholas(アドゴラス)」だけに利用されるエクスプロイトキットとして知られ、この広告キャンペーンを介したオンライン銀行詐欺ツール「Dreambot/Gozi(別名「URSNIF」、「BKDR_URSNIF」として検出対応)」や「RAMNIT(「TROJ_RAMNIT」、「PE_RAMNIT」として検出対応)」など、深刻な脅威をもたらしていました。また、別の不正広告キャンペーン「Seamless」による不正サイトへの誘導に利用されることも、弊社では確認しています。「Seamless」は、通常、「Rig EK」が利用されることで知られています。
「Astrum EK」の最近の活動からは、複数の更新が施され、上述のような既存のマルウェアに利用されるだけでなく、利用範囲を広げ、今後の大規模なキャンペーン活動の準備をしているようにも見えます。特に「ディフィー・ヘルマン鍵交換(DH鍵交換)」を悪用して、セキュリティリサーチャやエンジニアの解析やフォレンジック分析を阻もうとする手口は、セキュリティ対策へ挑戦とも見て取れます。
続きを読む仮想環境で解析を行うサンドボックス技術は、ネットワークの最終防衛ラインであるエンドポイントセキュリティ対策製品が広く採用する仕組みです。砂場という名称の通り、サンドボックスはマルウェアや疑わしいファイルがルーチンを実行するなど、自由に振る舞うことのできる仮想環境です。マルウェアを仮想環境で実行してその実際の活動を既存の振る舞いやルーチンのパターンと比較分析し、悪意の有無を判定します。このように、システムのインフラストラクチャに被害を与える恐れのある信頼できないファイルを隔離し、エンドポイントセキュリティをより確かなものにします。
続きを読む開発者は、ソフトウェアのバージョン更新や、プロジェクトの管理と維持のためにこまめにソースコードを変更したり再加工したりする必要があります。そのような目的のために広く利用されている「GitHub」は、バージョン管理システムを提供するオンラインのリポジトリホスティングサービスです。ソースコードの管理・共有・合作・統合のための貴重なプラットフォームを提供している GitHubは、プログラマや開発者のためのソーシャル・ネットワーキング・サイトのように活用されています。
しかし、GitHubは悪用されることもあります。オープンソースのランサムウェアのプロジェクト「EDA2」と「Hidden Tear」は、教育目的を意図して作成されたはずでしたが、GitHubで公開されて以来、さまざまなランサムウェア亜種を生み出し、企業に損害を与えてきました。「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」機器の不具合を悪用するツールも GitHubで入手可能でした。標的型攻撃で利用されたキーロガー「Limitless」でさえ、GitHubのプロジェクトにリンクしていました。
続きを読む「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」の時代を迎え、多くの「サイバー資産」がインターネット上に「公開」されている状況が世界的に確認されています。この「公開」の中には、意図的なものもあれば意図せず露出してしまっているものもあり、その多くでセキュリティ対策が適切に施されていないこともわかっています。トレンドマイクロではオンライン検索エンジン「Shodan」を使用し、米国と日本においてインターネット上に公開されている「サイバー資産」に焦点を当てた調査を行いました。その結果、インターネットからアクセス可能な「産業制御システム(Industrial Control Systems、ICS)」の存在など、さまざまな問題点が明らかになりました。
図1:Shodanの画面例
しばらく鳴りを潜めていたランサムウェア「TorrentLocker(トレントロッカー)」(「RANSOM_CRYPTLOCK.DLFLVV」、「RANSOM_CRYPTLOCK.DLFLVW」、「RANSOM_CRYPTLOCK.DLFLVS」、「RANSOM_CRYPTLOCK.DLFLVU」として検出)が、2017年2月下旬以降、再び活発化しています。これらの亜種は、クラウドストレージサービス「Dropbox」のアカウントを不正利用して拡散します。この新しいタイプの攻撃は、ランサムウェアによる「攻撃の手口や標的が多様化する」という、トレンドマイクロによる 2017年の脅威予測と合致しています。
続きを読む2016年6月、サイバー犯罪集団「Lurk(ラーク)」に関連する犯罪者 50人が逮捕されました。Lurkは、遅くとも 2011年から活動を開始し、2016年6月に逮捕されるまで、約4,500万米ドル(約50億円、2017年2月20日現在)相当を窃取しました。私達は、2011年から 2016年中旬まで、Lurk が利用する不正活動のコード解析や、ロシア国内における弊社の侵入検知システムが監視したネットワークトラフィックと URLパターンを分析することにより、このサイバー犯罪集団のネットワークアクティビティを監視、調査してきました。この調査によって収集した情報を元に、逮捕されるまでの約5年間の不正活動の変遷について 2回に分けて報告します。
第1回:
- 痕跡を残さない不正活動。検出回避して攻撃対象かどうかを確認
- 2011年から 2012年初期:Lurk、活動を開始
- 2012年中頃から 2014年中頃:マルウェアの向上、組織化した犯罪集団に
「脆弱性攻撃ツール(エクスプロイトキット)」の脅威状況は、2016年後半に大きく変わりました。それまで非常によく利用されていたエクスプロイトキットが突然減少する、あるいはサイバー犯罪者がその運用方法を切り替える、などの変化が見られました。「Angler Exploit Kit(Angler EK)」は、2015年以来、最も活発なエクスプロイトキットでしたが、突然活動を終了しました。2016年第1四半期に検出された 340万件のAngler EKの攻撃について、トレンドマイクロが追跡調査したところ、2016年後半、攻撃率は「0」にまで急低下しました。
続きを読む