トレンドマイクロでは2019年における国内外での脅威動向について分析を行いました。特に国内での脅威を振り返った場合、個人利用者が直接の被害を受ける攻撃としては、9月以降に顕著化した国内ネットバンキングのワンタイムパスワード突破を狙うフィッシング攻撃に加え、利用者のカード情報詐取を狙うECサイト改ざんの攻撃などが挙げられます。また、特に法人組織に被害を与える攻撃として、2019年前半には法人利用者におけるランサムウェア被害が顕在化しました。そして、10月以降には、メール経由で拡散する「EMOTET」の攻撃が、最も大きな脅威となりました。これらの攻撃の中からは「人の弱点を利用し常識を覆す攻撃」と「高度な攻撃手法の一般化」が見られています。
続きを読むトレンドマイクロは、「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」デバイスに感染するマルウェア「Mirai」の亜種2つを確認しました。 「SORA」(検出名「IoT.Linux.MIRAI.DLEU」)と「UNSTABLE」(検出名「IoT.Linux.MIRAI.DLEV」)と名付けられたこれらの亜種は、脆弱性「CVE-2020-6756」を利用して監視カメラ用ストレージシステム「Rasilient PixelStor5000」へ侵入します。
続きを読むソーシャルエンジニアリングの手法を使い、メール受信者に恐怖心を抱かせて金銭を要求する新しいセクストーション(性的脅迫)の手口が確認されました。最近のセクストーションの手口の傾向に違わずビットコインでの支払いを要求するこの事例は、今年2020年初め、メールセキュリティ企業「Mimecast」のリサーチャによって確認されました。1月2日から3日にかけて、主に米国のメールアカウント所有者にむけて合計1,687通の脅迫メールが送信されたことが報告されています。
一見したところこの手口は過去数年間で確認されている他のセクストーションのものと違いはありません。あまり珍しくない、「要求額を支払わなければ、受信者の裸が映った動画を成人向けWebサイトで公開する」という脅迫内容です。
続きを読むインターネット上にいったん公開されたデジタルデータを消去することは困難です。特に、個人利用者や法人組織から漏えいした情報は、暴露されたり、サイバー犯罪者間で取引されたりして広まり、抹消することは困難です。結果的に、新たなサイバー犯罪に何度も「再利用」される可能性があります。2015年に「Ashley Madison(アシュレイ・マディソン) 」から漏えいしたとされる情報は、サイバー犯罪における漏えい情報再利用の例となってしまいました。
Ashley Madison は、既婚者向けの出会い系サイトです。2015年、サイトの運営会社「Avid Life Media」が「Impact Team」として知られるハッカー集団によってハッキングされました。Impact TeamはAvid Life Media に対し、Ashley Madisonともう一つの類似Webサイトを閉鎖しなければ、同サイトから収集した個人情報を暴露すると脅しました。Avid Life Mediaはこの要求に応じず、Impact Teamは数百万の会員の個人情報をダークWeb上で公開するに至りました。
図:確認された脅迫メールの例
続きを読むトレンドマイクロでは日夜多くのサイバー攻撃を監視していますが、その中で非常に興味深い事例を確認しました。監視チームはあるWebサイトのコンテンツ内に、「Magecart」が使用する不正スクリプトが埋め込まれているのを発見しました。ECサイトを狙う攻撃で猛威を振るうMagecartについては昨年12月20日の記事などでも報告していますが、これも同様の攻撃の一事例と思われました。ただし、その被害を受けたと思しきサイトは「Olympic Tickets 2020」のサイト名で東京オリンピックのチケット販売サイトを名乗っていました。httpsの実装や「運営会社」の表示もあり、サイトを一見しただけでは不審点が見つけにくいものでしたが、海外で東京オリンピックのチケットを販売してよい業者は決まっています。また海外ではチケット転売に関してライセンス制を敷くなど合法な国も多いものですが、今回の東京オリンピックに関しては組織委員会が用意する公式リセールサービス以外での転売は禁じられています。これらのことから、このサイトはオリンピックチケット販売を詐称する偽サイトであるものと判断されました。本記事執筆時点の2月3日現在、既にこの偽サイトはアクセス不可になっていますが、今後も同様の事例が登場する可能性は高く、注意が必要です。
図1:Magecartの使用するスクリプトが発見されたWebサイト
海外では指定業者にしか許可されていないはずの
オリンピックチケット売買を謳っており、偽サイトと判断できる
図2:サイト上のGoogle翻訳機能で日本語化した際の表示例
産業制御システム(ICS)を利用する公益事業への攻撃は増加の一途を辿っています。石油、ガス、水道、電力などのエネルギー産業は、ICS環境の侵害を狙うサイバー犯罪者にとって価値の高いターゲットであることは明らかです。これらのエネルギー産業とその施設は世界中のどこの経済にとっても必要不可欠であるため、攻撃者はそれぞれの目的に基づき、運用妨害の攻撃を試みます。ICSのネットワークへの数々の侵入が確認されていることも、攻撃対象としてのエネルギー業界への関心の高まりを表しています。この状況を踏まえ、産業セキュリティ会社Dragosは、米国の電力施設を標的にする7つのグループについて報告しました。ここでは電力網を侵害し、運営を妨害する実行能力を持つグループのうち、特に注目される「Dymalloy(ダイマロイ)」「Electrum(エレクトラム)」「Xenotime(ゼノタイム)」の3つについて概要を説明します。
続きを読む2019年に注目された攻撃のいくつかにも登場した暗号化型ランサムウェアに「Sodinokibi(ソディノキビ)」(「Ransom.Win32.SODINOKIBI」ファミリとして検出)があります。このランサムウェアに関して、年末以降に、Albany(オールバニー)国際空港や外国為替会社のTravelex(トラベレックス)をはじめとした複数の組織で被害が確認されました。これらの被害には、法人組織におけるランサムウェア被害と攻撃手法の変化が見られています。
2019年もサイバー犯罪が猛威を振るい、インターネット、PC、各種デバイスを利用する一般利用者がさまざまな影響を受けた年となりました。「2019年上半期セキュリティラウンドアップ」でも報告しているとおり、トレンドマイクロ製品のクラウド型セキュリティ基盤「Trend Micro Smart Protection Network(SPN) 」では2019年上半期の6か月間だけで、メール、ファイル、URLの脅威を合わせて268億以上をブロックしました。これは一般利用者を狙うサイバー犯罪者がさまざまな手口で攻撃を行っていることを示しています。
デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現が望まれる中、当記事では、今後の新たな10年を迎える上で、2020年に注視すべき脅威動向を、2019年に注目された脅威と合わせて、説明します。セキュリティ対策の原則は2020年も変わりません。常に細心の注意を払い、不審点に留意し、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。
続きを読む2019年11月の本ブログ記事でお伝えしたマルウェア「EMOTET(エモテット)」の国内での感染拡大ですが、その後もさらに激化が続いています。トレンドマイクロのクラウド型次世代セキュリティ技術基盤「Smart Protection Network(SPN)」の統計によれば、EMOTETの検出台数は2019年11月に入りいったん落ち着いたかのように見えましたが、12月にはまた8,000件を越える急増となりました。
図1:国内でのEMOTET検出台数推移
(不正Office文書ファイル含む)
トレンドマイクロの監視では、感染したEMOTETに対して指令を送る遠隔操作用サーバ(C&Cサーバ)は、12月20日前後からいったん休止し、2020年に入って1月13日から活動再開したことがわかっています。しかしEMOTET検出台数は1月中旬までの速報値で既に1,500件を越えており、活動再開後わずかの期間にも関わらず高い数値となっています。このことからは、国内利用者を狙うEMOTETの攻撃は高いレベルで継続していると言え、注意が必要です。
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