マルウェアキャンペーンの背後に潜む犯罪組織の正体を見極めるのは難しい作業です。サイバー犯罪者は標的であるユーザや企業を混乱に陥れたり、システムやネットワーク環境に危害を加えたりするために設計したソフトウェアに自身の正体が露呈するような痕跡を残すことはめったにありません。しかし、識別のカギとなる情報を既知の情報源と比較することで、そのキャンペーンが特定のサイバー犯罪集団によって実行された可能性が高いと判断することができます。これは犯罪組織が長年にわたり活動を継続し比較対象となる痕跡を多く残している場合、さらに信憑性が高くなります。トレンドマイクロが発見し「Operation Earth Kitsune」と名付けた標的型攻撃キャンペーンについてその「TTPs(=Tactics, Techniques and Procedures:戦術、技術、手順)」に関する詳細解析の結果をホワイトペーパー(英語)にまとめて公開し、本ブログでも概要について報告しました。このキャンペーンに関与した2種の新たなスパイ活動を行うバックドア型マルウェアを拡散する水飲み場型攻撃の技術的な詳細解析を行う中で、韓国を主な標的とすることで知られるサイバー犯罪集団「APT37(別名:Reaper、Group 123、ScaCruftなど)」に起因した別のマルウェアとの顕著な類似性を発見しました。
続きを読むトレンドマイクロは2019年2月下旬、新種のバックドア型マルウェアを確認し、「SLUB」と名付けて3月14日の記事で解説しました。当時確認されたバージョンのSLUBは、VBScriptエンジンの脆弱性「CVE-2018-8174」を利用した水飲み場型攻撃で拡散し、リポジトリホスティングサービス「GitHub」とコミュニケーションプラットフォーム「Slack」を悪用してコマンド&コントロール(C&C)通信を行っていました。
2019年7月9日、新しいバージョンのSLUBが別のWebサイトを利用した水飲み場型攻撃によって拡散されていることが確認されました。この水飲み場型攻撃サイトは、Internet Explorer(IE)の遠隔からのコード実行(Remote Code Execution、RCE)脆弱性「CVE-2019-0752」を利用します。CVE-2019-0752はトレンドマイクロが運営する脆弱性発見・研究コミュニティ「Zero Day Initiative(ZDI)」によって発見された脆弱性で、2019年4月に修正プログラムが公開されています。今回の攻撃はCVE-2019-0752の利用が確認された初めての事例です。
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