マルウェアキャンペーンの背後に潜む犯罪組織の正体を見極めるのは難しい作業です。サイバー犯罪者は標的であるユーザや企業を混乱に陥れたり、システムやネットワーク環境に危害を加えたりするために設計したソフトウェアに自身の正体が露呈するような痕跡を残すことはめったにありません。しかし、識別のカギとなる情報を既知の情報源と比較することで、そのキャンペーンが特定のサイバー犯罪集団によって実行された可能性が高いと判断することができます。これは犯罪組織が長年にわたり活動を継続し比較対象となる痕跡を多く残している場合、さらに信憑性が高くなります。トレンドマイクロが発見し「Operation Earth Kitsune」と名付けた標的型攻撃キャンペーンについてその「TTPs(=Tactics, Techniques and Procedures:戦術、技術、手順)」に関する詳細解析の結果をホワイトペーパー(英語)にまとめて公開し、本ブログでも概要について報告しました。このキャンペーンに関与した2種の新たなスパイ活動を行うバックドア型マルウェアを拡散する水飲み場型攻撃の技術的な詳細解析を行う中で、韓国を主な標的とすることで知られるサイバー犯罪集団「APT37(別名:Reaper、Group 123、ScaCruftなど)」に起因した別のマルウェアとの顕著な類似性を発見しました。
続きを読む本ブログでは2019年3月14日公開の記事で、バックドア型マルウェア「SLUB」が過去に実施した一連の拡散活動(キャンペーン)に関する調査結果について詳説しました。そしてその後の継続した調査により、SLUBの新たな亜種を含む水飲み場型攻撃経由の新たなキャンペーンを確認しました。トレンドマイクロではこの新たなキャンペーンを「Operation Earth Kitsune」(アースキツネ)と命名し、2020年10月には調査結果をホワイトペーパー(英語)としてまとめ、公開しました。バックドアSLUBの名称は、コミュニケーションプラットフォーム「Slack」とリポジトリホスティングサービス「GitHub」を悪用していたことから命名されたものですが、新たなバージョンのSLUBではどちらのプラットフォームも悪用されていません。代わりに、オンプレミスでも簡単にデプロイ可能なオープンソースのオンラインチャットサービス「Mattermost」が悪用されました。弊社では、プラットフォームが悪用されている事実について既にMattermost社に報告しています。