インターネットの深層に潜む闇市場:「Silk Road」は氷山の一角

「Silk Road」は、あらゆる種類の違法な商品を求める者にとって、おそらく最もよく知られた闇市場 Webサイトです。そこで取引されている違法な商品は、違法薬物から銃器、暗殺依頼にまで多岐に及びます。

2013年10月2日、2年半にわたる運営の後、Silk Road は、米連邦捜査局(FBI)により閉鎖され、所有者が逮捕されました。Ross William Ulbricht 容疑者は、Silk Road の所有者および中心的な管理者「Dread Pirate Robert」であるとして告訴され、2013年10月1日、サンフランシスコ市の公立図書館において FBI による逮捕に至りました。Ulbricht 容疑者に対して申し立てられた訴状には、Silk Road 運営の詳細と、麻薬取引および PC ハッキング、マネーロンダリングを共謀した罪を問う旨が記されています。さらに Ulbricht 容疑者は、当該サイトの何千ものユーザの個人情報を公開するよう脅迫した他の Silk Road のユーザに対して、委託殺人を募ったという罪でも告訴されています。

図1:Silk Road のメインページ
図1:Silk Road のメインページ

図2:閉鎖後の Silk Road のメインページ
図2:閉鎖後の Silk Road のメインページ

FBI は、360万米ドル(2013年10月4日時点、約3億5千万円)相当の電子通貨「Bitcoin(ビットコイン)」を差し押さえたと発表。すべてのビットコインの取引は公表されているため、この取引は「Bitcoin blockchain」で簡単に確認することができます。ビットコインは、非常に変動の激しい通貨であり、今回の摘発を受けその価値が下落しましたが、おそらくすぐに回復すると考えられます。

FBI によると、Silk Road は、2年半の運営中に 950万ビットコイン以上を売上げ、販売手数料でも60万ビットコイン以上を集めたといいます。訴状が申し立てられた時点でその総額は、約 12億米ドル(約 1166億5千万円)相当の売上げと、約 8000万米ドル(約 77億8千万円)相当の手数料となっていました。

Silk Road が長期にわたり運営できた理由の一部に、匿名通信システム「The Onion Router(TOR)」ネットワーク上の秘匿サービスとしてホストされていた点があげられます。TOR を利用すると、暗号化されたリクエストの経路を自発的に担う PC のネットワークにより、匿名の通信が可能になります。このため、すべてのトラッフィクは、ネットワーク内の監視ツールから隠ぺいされます。本来 TOR は、犯罪やそれに近い目的というよりも、一般的にオンライン上での匿名を希望するユーザや、インターネットへの接続が規制されている国々に住むユーザよって使用されるものです。

今回の逮捕と閉鎖は、検索エンジンの巡回では到達できない上述のような「ディープWeb」の闇市場に関して、トレンドマイクロの「Forward-looking Threat Research(FTR)」チームが調査したリサーチペーパ作成の時期とも一致します。今回の事例を受けて、弊社では日程を少し早めてこのペーパをリリースする予定です。リリースに関しては、当ブログでも確認することができます。

本件の調査に関する全詳細は、以下のリサーチペーパをご参照ください。

・ 「Deep Web とサイバー犯罪」
  https://inet.trendmicro.co.jp/doc_dl/select.asp?type=1&cid=118

参考記事:

  • DeepWeb and Cybercrime – it is not just the Silk Road
     by Robert McArdle (Senior Threat Researcher)
  •  翻訳:木内 牧(Core Technology Marketing, TrendLabs)

    【更新情報】

    2013/12/09 14:00 リサーチペーパのリンク先を追加しました。