ウイルス作成、保管を罰するサイバー刑法が可決

ウイルス作成、保管を処罰する刑法改正案(いわゆるサイバー刑法)が2011年6月17日に可決、成立しました。

今回の刑法改正案は、1)正当な理由なく、2)無断で他人のコンピュータにおいて実行させる目的で、という二つの条件を満たした上でコンピュータウイルスを作成、提供した場合に処罰される、という点が大きなポイントです。


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これまで日本国内では悪意を持った形で不正プログラムを作成、保存すること自体は刑法で罰することができませんでした。その例として、2008年に「原田ウイルス」と呼ばれる不正プログラムの作者は、使用したテレビアニメーションの画像についての著作権侵害と友人の個人情報や写真を使用した名誉棄損で有罪となりました。また、同じ人物が執行猶予期間中に作成した「タコイカウイルス」については、被害者のパソコンのハードディスクを使用不能にしてしまうことから器物損壊の容疑で2010年に逮捕されています。

今回の刑法改正案可決、成立によって、このような悪意を持った形で不正プログラムを作成、保存すること自体を直接的に罰することが可能になります。

サイバー刑法では、悪意を持った形でウイルスを作成、使用した場合には3年以下の懲役または50万円以下の罰金、そして所持、保管した場合は2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになります。

国内での取り締まりの強化はもちろんですが、2001年に欧州評議会で採択され日本も署名をしている「サイバー犯罪に関する条約」など、サイバー犯罪への今後の国際協調に向けても日本国内の体制も強化されていることを意味しています。

セキュリティベンダであるトレンドマイクロとしては、近年頻発しているサイバー犯罪に対する国家的な取り組みの一つとして評価できるものです。悪意を持った形で不正プログラムを作成、使用したり、あるいは所持、保管しただけでも犯罪である、ということを一般的に浸透させることができるだけでなく、今後も続発するであろう様々なサイバー犯罪を取り締まる上での大きなステップとなることでしょう。

参考:法務省「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」
   http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00025.html