スマートフォンやタブレットといったモバイル端末だけでなく、スマートテレビやウェアラブル、スマートメーターといった様々なものがインターネットに接続される「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」が最近国内でも大きく話題になっています。IoT の世界においては、あらゆるものがインターネットに接続され、利用者側の利便性や生活の質の向上が見込まれます。一方で、IoT の世界で取り扱われる個人に関連する情報のセキュリティやプライバシーを利用者側はどのように考えているのでしょうか?
トレンドマイクロでは、2014年12月に日本、米国、そして欧州 16カ国に在住する個人ユーザ 1903名を対象に、意識・実態調査「IoT時代のプライバシーとセキュリティ意識」を実施し、IoT時代に個人ユーザがどのような懸念を持っているかについて調査ました。
今回の調査の結果、個人ユーザの 100% が IoT関連のスマートデバイスを現在利用中あるいは利用予定(スマートフォン・タブレットを除いても 95%)と回答する一方、80% が IoT時代のセキュリティを懸念していることが明らかになりました。中でも、米国(75%)、欧州(82%)と比較して、懸念している個人ユーザの割合は日本(83%)が最も多いことが分かりました。あらゆるものがインターネットに接続されていく中で、IoT の世界における個人情報のセキュリティに懸念を持っている個人ユーザが非常に多いことが分かります。
図1:IoT 利用時の個人情報のセキュリティやプライバシーに懸念がある個人ユーザの割合
実際問題、IoT関連端末はスマートフォンやタブレットに限らず普及し始めているのが現状です。スマートフォン・タブレットについては 76% が「現在利用している」、あるいは「利用する予定である」と回答している一方で、スマートテレビ(70%)、スマート電力メーター(46%)、冷蔵庫やオーブンといったスマートキッチン家電(44%)についても現在利用している、あるいは利用を予定していると回答しています。日本国内だけで見てみても、スマートフォン・タブレット(77%)、スマートテレビ(72%)、スマート電力メーター(49%)、スマートキッチン家電(45%)を現在利用している、あるいは利用予定と回答しており、国内でも IoT が単なる話題ではなく実際に普及に向けて市場が動いていることが分かります。
図2:各種 IoT端末の利用状況・利用意向
現在、国内でもウェアラブル端末などの IoT端末に注目が集まる中、個人情報保護法の改正が議論されている真っ只中です。特に改正案に盛り込まれたものの一つに「匿名個人情報」があります。「匿名個人情報」が盛り込まれた背景には、ビッグデータの有効活用があるといわれています。IoT の世界においては、利用状況や嗜好などの利用者に関する実に様々な情報が収集され、その後のサービス提供を含めビジネスにおいて利活用されることになります。
IoT に接続するスマートデバイスのメーカーや事業者が提供すべきと思う情報や機能にはどのようなものがあるか尋ねたところ、「自分に関する個人情報が紛失・盗難にあった場合、補償してくれる」(73%)、「どのように情報が利用されるのか」(70%)、「どのような情報が収集されるのか」(67%)と、IoT においてどのような目的でどのような情報を収集しているのかに関する情報開示や、事故が起きた際に責任ある対応を求めていることが分かります。
図3:IoT に接続するスマートデバイスのメーカーや事業者が提供すべき機能や情報(n=1903)
また、IoT の利便性は自身が持つプライバシーやセキュリティの懸念を上回ると考えているのは全体の 44% にとどまっており、IoT市場の活性化にはメーカーや事業者が利用者の懸念を払しょくする施策をどれだけ実施できるかが一つのカギになると考えられます。
IoT の時代においては、様々なデバイスがインターネットに接続されます。現在はスマートフォンとタブレットにとどまっている家庭においても、今後はスマートテレビやスマート冷蔵庫、スマート電力メーターを含むありとあらゆる IoT機器が家庭内で利用されていくのは必至です。個人ユーザは、セキュリティソフトが利用できる端末においてはセキュリティソフトをインストールするのはもちろんですが、デバイスが接続されるポイントで一括してセキュリティ対策を行う IoT時代にあったセキュリティ対策の検討も必要になってきます。また、IoT機器のメーカーや事業者がどのようなセキュリティ対策を実施し、どのような情報をどのような目的で取得しているのかに関する情報を取得することを推奨します。一方、IoTに接続するスマートデバイスのメーカーや事業者は、インフラの安全性を担保することに加え、個人情報の取り扱いの方針を策定し、それを利用者に開示することが求められます。
今回実施した「IoT時代のプライバシーとセキュリティ意識」調査は、こちらからダウンロードしてください。