トレンドマイクロは、被害者のシステムに大量の遠隔操作ツール(RAT)を送り付けるファイルレス攻撃キャンペーンを確認しました。この攻撃では「クリプターサービス」である「HCrypt」の派生系が使用されていました。「クリプター」とは、攻撃者が自身の使用するマルウェアの検出回避/困難化の目的で使用する、暗号化/難読化用ツールです。HCryptは「Crypter-as-a-service」(クリプターサービス)として認識されており、検出困難化のためのクリプター/多段化ジェネレーターです。攻撃者はサービスにお金を払って選択したマルウェアに最適な難読化を施し、多段のロード手法によるファイルレス活動を行うためのスクリプトを入手します。今回確認したHCryptの新しいサービスでは、過去に確認したものと比べて、新たな難読化メカニズムが使用されていました。今回の攻撃は2021年8月中旬に活動のピークを迎えていましたが、これまでに観測されたものとは異なる新たな難読化の手法や攻撃ベクタが確認されています。
続きを読むトレンドマイクロでは2021年上半期(1~6月)における国内外での脅威動向について分析を行いました。2020年から続く新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは2021年に入っても大きな影響を与え続けています。このコロナ禍の状況において起こっている「テレワーク推進」と「クラウド化」という組織ネットワークの変化の加速を、サイバー犯罪者は「利用」しているかのように見えます。
組織のネットワークへ侵入し気づかれぬように内部活動を行う標的型攻撃の手法は、ランサムウェア攻撃においても常套手段化しています。この6ヶ月の間に、ランサムウェアグループは米国の大手ガス供給会社を操業停止させ、米国東海岸の半分が燃料不足に陥るという事件が発生しました。また、他のランサムウェアの攻撃者は、二重恐喝の手口を用いて企業から100万ドルの支払いを得ました。ランサムウェアの甚大な被害を防ぐには、ランサムウェアを展開される前にネットワーク内で発生している不審な活動を可視化し、適切な対応を迅速に行う必要があります。
図:ランサムウェアの暴露サイト上で確認した暴露投稿とそのうちの日本企業関連投稿の件数推移
(トレンドマイクロ調べ)
2019年、トレンドマイクロは、コロンビアを拠点として、南米諸国の企業に対してメール攻撃を展開していると思われる攻撃者についてブログ記事を公開しました。この攻撃者は「APT-C-36」、或いは「Blind Eagle」と呼ばれることもあります。本ブログ記事では、トレンドマイクロがAPT-C-36の動向の追跡中に確認したメール攻撃に関する新たな調査結果を共有します。
図1:APT-C-36によるコロンビア政府税関当局を偽装した攻撃メール例
続きを読む近年のマルウェアは、自身のネットワークトラフィックを隠匿するために暗号化を行うことが増えています。一般的なネットワーク通信の暗号化が普及していることを考えると、これは当然のこととも言えます。Googleの透明性レポートでは、Google Chromeブラウザを経由するネットワークトラフィックの大部分はHTTPSトラフィックであることが報告されています。
トレンドマイクロでは過去6年間で、汎用性の高いマルウェアおよび標的型攻撃に用いられるマルウェアの両方で暗号化が多用されていることを確認しています。これらの暗号化は、検出回避や暗号化された通常のトラフィックに不正な通信内容を混入させるために行われます。マルウェアだけでなく、Cobalt Strike、Metasploit、Core Impactなどの商用のペネトレーションテスト(侵入テスト)ツールでも暗号化が用いられています。これらの事例における証明書の利用は多くの場合、SSL/TLS暗号化通信で通常使用されるX.509証明書の利用にまで及びます。
続きを読むリモートアクセストロジャン(RAT)である「NukeSped」のサンプルの調査中、トレンドマイクロは、NukeSpedに散見されるものと同一のファイルレスルーチンを使用している「Bundlore」アドウェアのサンプルを複数検出しました。
RATであるNukeSpedを拡散させているのは標的型の攻撃者であるLazarusとされています。Lazarusは2014年以降、活発に攻撃を展開しています。NukeSpedの亜種は複数確認されており、多くは32ビットシステム上で稼働するように設計されています。検出回避を狙う活動として、暗号化された文字列を使用しています。最近では、Lazarusによるサイバー諜報活動の一環として、NukeSpedをより複雑化した「ThreatNeedle」と呼ばれるRATも出現しています。次に、Bundloreは、正規アプリのダウンロードを偽装し、ターゲットのデバイスにアドウェアをインストールするマルウェアファミリーです。本サンプル中から検出した、暗号化されたMach-Oファイル(macOSでの実行可能形式ファイル)は、Bundloreアドウェアのステルス活動をメモリに内在する脅威、つまりファイルレス活動へとアップグレードしていました。また、BundloreはmacOS向けのアドウェアであり、昨年は当時の最新バージョンであるmacOS Catalinaでの攻撃が確認されていました。
続きを読むトレンドマイクロでは最近、シリア電子政府サイト上に掲載された悪意あるAndroidマルウェアのサンプルに関する調査を実施しました。トレンドマイクロでは攻撃者グループ「StrongPity(別名:PROMETHIUM)」の犯行の可能性が高いと考えています。また、弊社の知る限り、同グループが攻撃の一環としてAndroid向け不正アプリを使用していることが確認されたのは、今回が初めてです。
本ブログ記事では、Androidマルウェアに関連した同グループの攻撃の戦術・技術・手順(TTP)および今回の攻撃活動の帰属が攻撃者グループ「StrongPity」であると判断した理由について取り上げます。
続きを読むカナダ・トロント大学のセキュリティ研究所「Citizen Lab」は、バーレーンの活動家9人に対して使用された高度なiPhone向けエクスプロイト(脆弱性攻撃ツール)の詳細についてレポートを発表しました。このレポートでは、これらの活動家がハッキングされた際に、イスラエル企業「NSO Group」が開発したスパイウェア「Pegasus」を用いてゼロクリックで実行可能な2つのiMessage用エクスプロイトが悪用されていたことが報告されています。今回の攻撃活動で悪用されたエクスプロイトは、2020年に確認された「Kismet」および2021年に確認された「ForcedEntry」です。ゼロクリック攻撃は、一般的なマルウェアとは異なり、デバイスに感染するためにユーザの操作を必要としないことから、高度な脅威に位置づけられています。特に後者のForcedEntryエクスプロイトは、このようなゼロクリック攻撃の侵入活動からユーザを保護するためにAppleが設計したBlastDoorなどのセキュリティ保護機能を回避できるため、注目に値します。
続きを読むトレンドマイクロでは最近、クラウド上での暗号資産(旧仮想通貨)マイニングアプリを装ったモバイル詐欺アプリを8件検出しました※。アプリの説明によると、ユーザはクラウド上でのマイニングに投資し、暗号資産を獲得することができるとされています。しかし、実際にアプリを解析してみると、このアプリはマイニング機能向上と称して広告へと誘導し、月額平均15USドル程度の定期購読サービスに加入させるだけであることが分かりました。弊社が調査結果をGoogleに報告すると、当該アプリはPlay Storeから直ちに削除されました。
※弊社ではAndroidOS_FakeMinerPay および AndroidOS_FakeMinerAとして検出します。
続きを読む前回のMicrosoftの9月分セキュリティアップデート解説に続き、今回はAdobe、Apple、Google Chromeのアップデートについて解説します。