ボット型マルウェア「EMOTET」はサイバーセキュリティ業界でその名を馳せています。EMOTETを背後で操るオペレータが、スパムメールを使ってシステムを侵害した後、それらのシステムへのアクセス権を販売することに成功した為です。これはマルウェアをサービスとして提供する悪名高い手口「Malware as a Service(MaaS)」の一環として、MaaS利用者の不正ペイロードをEMOTETに配信させることで実施されました。バンキングマルウェア「Trickbot」や、ランサムウェア「Ryuk」/「Conti」などの悪名高い脅威の背後にいるオペレータは、自身の攻撃活動にEMOTETを用いた攻撃者グループの1つです。
続きを読むトレンドマイクロでは2021年上半期(1~6月)において、二重恐喝の手口を用いて標的組織に被害をもたらすなど、新たな手口を取り入れたランサムウェア攻撃が依然として活発で高度化していたことを確認しました。従来のランサムウェア戦略とは異なり、新型ランサムウェアのオペレータは「暴露型」の手口として、感染端末から窃取したプライベートデータを人質として利用し被害者に圧力をかけ、身代金が支払われない場合は盗み出した重要情報をリークサイト上で暴露すると脅します。トレンドマイクロは2021年に入ってからこれらの脅威と旧来のランサムウェアファミリを追跡調査した結果、どの攻撃活動の勢いが増し、どのファミリが法人組織や個人ユーザにとって特に危険であるかを突き止めました。
続きを読むトレンドマイクロでは、情報窃取型マルウェア「BazarLoader」(トレンドマイクロ製品では「TrojanSpy.Win64.BAZARLOADER」、「TrojanSpy.Win64.BAZARLOADER」、「Backdoor.Win64.BAZARLOADER」として検出)を用いたキャンペーンの監視を続けています。情報セキュリティフォーラムは、2021年第3四半期にBazarLoaderの検出数が急増したことを報告していますが、トレンドマイクロは、攻撃者がデータの窃取やランサムウェア攻撃に悪用するために、既存の配信手法に新たな到達メカニズムを2つ追加していたことを発見しました。
そのうちの1つは、攻撃者が正規プログラムにBazarLoaderを同梱するために侵害されたソフトウェアインストーラを用いるというものです。もう1つは、Windowsショートカットファイル(.LNK)とダイナミックリンクライブラリ(.DLL)のペイロードを含むISOファイルを使用するというものです。トレンドマイクロは、BazarLoaderの最も検出数の多い地域がアメリカ大陸であることを観測しました。BazarLoaderの感染チェーンやキャンペーンに関する技術的分析や洞察については、トレンドマイクロの技術論文「BazarLoader Looking In: Analyzing the Infection Chains, Stages, and Campaigns(英語)」をご確認ください。
続きを読むバンキングマルウェア「ZBOT(別名:Zeus)」は、過去20年間で最も多くの被害をもたらした古くから存在するマルウェアファミリの1つです。ZBOTは2006年に初めて登場した後、2011年にアンダーグラウンドフォーラム上にそのソースコードを流出させたことで、その後数年間にわたって企業や組織を悩ませる新たな亜種を数多く登場させることになります。
最近確認されたZBOTの中で最も注目すべき亜種の一つが「Zloader」です。2019年後半に「Silent Night」という名前で初めてコンパイルされたZloaderは、情報窃取型マルウェアに始まり、「Cobalt Strike」、「DarkSide」、「Ryuk」などの他のマルウェアやツールをインストールして実行するための手段を攻撃者に提供する多機能ドロッパーへと高度化してきました。さらにZloaderは、攻撃者にリモートアクセス(遠隔操作)を提供したり、さらなる不正活動を可能にするプラグインをインストールしたりする機能も備えています。
続きを読む「豪州サイバーセキュリティセンター(ACSC)」は2021年8月、ランサムウェア「LockBit」を操るサイバー犯罪者グループが新たに「LockBit 2.0」として再び活動を活発化させていることを報告しました。この報告では、今回の攻撃活動において標的となる企業の数が増加し、「Ryuk」や「Egregor」などの暴露型ランサムウェアファミリの影響を受けたと見られる二重脅迫の手口が組み込まれていることが示されています。本記事では、このLockBit 2.0を使用する新たなランサムウェア攻撃についてトレンドマイクロの調査結果をまとめます。トレンドマイクロでは既に日本国内でもLockBitランサムウェアによる被害を複数確認しており、今後の拡大が懸念されます。
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メールを主な感染経路とするマルウェア「EMOTET」の被害が、日本国内で拡大しています。EMOTETは2014年から存在が確認されているマルウェアですが、明確に国内利用者を狙ったと言える攻撃は確認されていませんでした。しかし2019年に入り、日本も本格的な攻撃対象に入ってきたものと考えられます。実際、6月には東京都の医療関連組織におけるEMOTET感染による情報流出被害が公表されるなど、被害が表面化してきていました。海外では一時、EMOTETのボットネットのC&Cサーバが休止していたことが観測されていましたが、8月末に活動を再開したことが確認されました。トレンドマイクロでは、国内にEMOTETを拡散するメールの活発化を9月後半から確認しており、10月には検出台数の急激な増加を確認しています。JPCERT/CCも11月27日付で注意喚起を出しており、広範囲に被害が広まっているものと言えます。

図1:国内でのEMOTET検出台数推移