2021年に出現したランサムウェアファミリの中でも特に注目に値する「Hive」は、わずか4ヶ月間で300社以上の法人組織を侵害したと報告されており、同年下半期に波紋を広げました。これによりHiveの背後にいる攻撃者グループは、数百万米ドル(数億円)の利益を得た可能性があります。トレンドマイクロはその後、2022年3月にほとんど未知のランサムウェア「Nokoyawa」の攻撃手法が、Hiveと多くの共通点を持つことを発見しました。この2つのファミリは、使用するツールから様々な段階での実行順序に至るまで、攻撃チェーンにおける明らかな類似点を共有しています。現在Nokoyawaは南米の、主にアルゼンチンに拠点を置く組織を標的にしていると考えられます。
続きを読むPovlsomware(Ransom.MSIL.POVLSOM.THBAOBAなどとして検出)は概念実証(PoC)の目的で作成されたランサムウェアであり、2020年11月にGithub上で公開されたものです。Githubのページによると、セキュリティ製品のランサムウェア防御機能を「安全に」テストする目的で使用されると述べられています。Povlsomwareは現時点ではそれほど注目を集めておらず、話題として取り上げているサイトが2つか3つある程度です。しかしながら、その特徴には興味深い点がいくつかあります。特に、商用のペネトレーションツールであり、RyukやDoppelPaymerなどのランサムウェアファミリにも悪用されているCobalt Strikeとの互換性は注目に値します。この互換性により、一見シンプルな感染ルーチンが示す以上の能力をランサムウェアに与えています。さらに、この不正プログラムはオープンソースであるため、誰もが変更を加え、攻撃チェーンの一部として使用できます。
2021年9月初め、中国のQ&Aサイト「知乎(Zhihu)」上であるユーザが、『検索エンジンで「iTerm2」というキーワードを検索した結果、正規サイト「iterm2.com」を偽装した「item2.net」という偽サイトに繋がった』と報告したことを確認しました(図1)。この偽サイト内に記載されているリンクからは、macOS向け端末エミュレータ「iTerm2」の偽バージョンがダウンロードされます。この偽アプリが起動されると、47[.]75[.]123[.]111から悪意のあるPythonスクリプト「g.py」をダウンロード・実行して、感染端末から個人情報を収集します。トレンドマイクロ製品ではiTerm2の偽バージョンを「TrojanSpy.MacOS.ZURU.A」として、悪意のあるスクリプトを「TrojanSpy.Python.ZURU.A」として検出します。
バンキングマルウェア「ZBOT(別名:Zeus)」は、過去20年間で最も多くの被害をもたらした古くから存在するマルウェアファミリの1つです。ZBOTは2006年に初めて登場した後、2011年にアンダーグラウンドフォーラム上にそのソースコードを流出させたことで、その後数年間にわたって企業や組織を悩ませる新たな亜種を数多く登場させることになります。
最近確認されたZBOTの中で最も注目すべき亜種の一つが「Zloader」です。2019年後半に「Silent Night」という名前で初めてコンパイルされたZloaderは、情報窃取型マルウェアに始まり、「Cobalt Strike」、「DarkSide」、「Ryuk」などの他のマルウェアやツールをインストールして実行するための手段を攻撃者に提供する多機能ドロッパーへと高度化してきました。さらにZloaderは、攻撃者にリモートアクセス(遠隔操作)を提供したり、さらなる不正活動を可能にするプラグインをインストールしたりする機能も備えています。
セキュリティリサーチやシステムの運用管理、ペネトレーションテスト(侵入テスト)などの正当な目的で使用される様々な正規ツールがあります。しかし、昨今ではサイバー犯罪者たちはそれらをランサムウェア攻撃に悪用しています。現在では、正規ツールはランサムウェア攻撃を行う際の典型的な構成要素となっています。
サイバー犯罪者にとって、ランサムウェア攻撃で正規ツールを使用すると都合が良い理由はいくつかあります。まず、正規ツール自体は不正なものではないため、セキュリティソリューションによる検出を回避できる可能性があります。次に、ほとんどのツールがオープンソースであり、誰もが無料でアクセスして使用できる点です。そして、ツールの機能が優れており、セキュリティリサーチャだけでなくサイバー犯罪者にとっても有用性が高い点です。これらの要因によって、図らずも正規ツールを諸刃の剣へと変化させています。
この記事では、悪用されることが多い正規ツールであるCobalt Strike、PsExec、Mimikatz、Process Hacker、AdFind、MegaSyncについて解説します。
続きを読む2021年5月下旬、トレンドマイクロの「Managed XDR」は、お客様のエンドポイントにおいて注目すべき「Trend Micro Vision One™(以下、Vison One)」のアラートを通知しました。その後、他の類似した感染端末でもCobalt Strikeの検出が確認されたため、詳細な調査を実施しました。
この記事では、今回の調査で実施した戦術および手順を説明します。今回の事例では、あるエンドポイントからのアラートをきっかけにして、さらに他の感染端末のエンドポイントを示す証拠や手がかりを収集することで、最終的に攻撃元を明らかにしました。
Cobalt Strikeは商用のペネトレーションテストツールですが、近年の標的型攻撃においてそのRAT機能が悪用される事例が目立っており、「Ryuk」、「DoppelPaymer」、「Povlsomware」などのランサムウェア攻撃でも悪用事例が確認されています。この記事では今回の調査事例を元に、Cobalt Strikeを悪用するこれらのランサムウェア攻撃の被害を阻止および除去するために必要な痕跡解明の手順を解説します。
図1:被害を受けた環境でのCobalt Strikeによる活動のマッピング
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