現在、国内で最も大きな脅威となっているマルウェアとして「EMOTET」が挙げられます。本ブログでもこれまで、EMOTETに関する様々な注意喚起と解析記事を取り上げてまいりました。EMOTETの主な拡散経路はマルウェアスパム、つまりメール経由です。EMOTETの攻撃メールのほとんどで、不正マクロを含むOffice文書ファイルを添付ファイルなどの形式で開かせる手口が使われてきました。これに加えこの4月末からは、Windowsのショートカットリンク(.lnk)ファイルを悪用する新たな手口も確認しています。本記事ではこのEMOTETの、不正マクロを含むOffice文書ファイル、ショートカットリンクファイルの双方の手口に対して弊社トレンドマイクロの検出技術がどのように有効であるのかを検証いたしました。検証にあたっては、当社のサポートケースでご提供いただいた検体やインターネット上から入手可能なサンプルを使用しました。またトレンドマイクロの検出技術としては、クロスレイヤの検知と対応(XDR)機能を搭載する脅威防御のプラットフォーム「Trend Micro Vision One™」を用いました。検証のシナリオとしては、添付ファイルに対し従来型検出技術(パターンマッチング)が未対応のタイミングでEMOTETのマルウェアスパムが着信し、利用者が添付ファイルを開いてしまった場合を想定します。
続きを読む2021年に出現したランサムウェアファミリの中でも特に注目に値する「Hive」は、わずか4ヶ月間で300社以上の法人組織を侵害したと報告されており、同年下半期に波紋を広げました。これによりHiveの背後にいる攻撃者グループは、数百万米ドル(数億円)の利益を得た可能性があります。トレンドマイクロはその後、2022年3月にほとんど未知のランサムウェア「Nokoyawa」の攻撃手法が、Hiveと多くの共通点を持つことを発見しました。この2つのファミリは、使用するツールから様々な段階での実行順序に至るまで、攻撃チェーンにおける明らかな類似点を共有しています。現在Nokoyawaは南米の、主にアルゼンチンに拠点を置く組織を標的にしていると考えられます。
続きを読む米国時間2021年12月9日にJava向けのログ出力ライブラリ「Apache Log4j」に潜在するリモートコード実行(RCE)の脆弱性情報が公開されました。以来、数多くの記事で取り上げられたことは、「Log4Shell」と名付けられたこの脆弱性の影響力の大きさを物語っています。Log4jは、コード変更なく簡単にログを提供することから、多くのプログラムに用いられています。これは、攻撃対象領域が広範囲に及ぶことを意味すると同時に、Amazon社、Apple社、Cloudflare社、Google社、Tencent社、Twitter社など、Log4jを用いる多くの有名企業が脆弱性を有する標的組織として狙われる可能性があることを示唆しています。また、Log4jを用いる組み込み機器にまで影響が及ぶため、攻撃対象領域がさらに拡大しています。本ブログ記事では、車載デバイスや車両プロパティの中でもコネクテッドカーに影響するものとして、特に電気自動車用充電器、車載インフォテインメント(IVI)システム、自動車用デジタルキーの3つに焦点を当てます。
続きを読む本ブログエントリでは、IoT(Internet of Things: モノのインターネット)Linuxマルウェアの調査結果を報告し、特にこれらマルウェアファミリが時間と共にどのように変化してきたかを分析します。トレンドマイクロが観測したマルウェアについて、その機能や特徴を定義するため、MITRE ATT&CK TTPs(Tactics、Techniques、Procedures)を用いました。
本調査より、IoT Linuxマルウェアは、特にIoTボットネットを構築するものについて、継続的に進化していることが分かりました。時間とともに実装する機能の追加、または、削除が見られます。とりわけ、データ送出や水平移動(ラテラルムーブメント)の機能ではなく、局所集中型の感染を引き起こす機能の進化に力が向けられる傾向があります。
表1に、トレンドマイクロが収集したマルウェア関連データの中で、最も多く実装されている機能やテクニックの上位10個を示します。
ATT&CK Tactic | Technique (TTP) |
マルウェア ファミリ数 |
Discovery(探索) | T1083:File and Directory Discovery(ファイルとディレクトリの探索) | 10 |
Command and Control(コマンド・コントロール) | T1071.001:Application Layer Protocol: Web Protocols(アプリケーション層プロトコル: Webプロトコル) | 9 |
Initial Access(初期アクセス) | T1133:External Remote Services (外部リモートサービス) | 8 |
Execution(実行) | T1059.004:Command and Scripting Interpreter: Unix Shell(コマンド・スクリプトインタプリタ: Unixシェル) | 7 |
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Impact(影響) | T1498.001:Network Denial of Service: Direct Network Flood(サービス拒否・直接フラッド攻撃) | |
Credential Access(認証情報アクセス) | T1110.001:Brute Force Password Guessing(ブルートフォースパスワード推定) | 6 |
Discovery(探索) | T1057:Process Discovery(プロセス探索) | |
Execution(実行) | T1106:Native API(ネイティブAPI) | 5 |
Impact(影響) | T1486:Data Encrypted for Impact(データ暗号化) | |
Defense Evasion(防御回避) | T1070.004:Indicator Removal on Host: File Deletion(ホスト上の痕跡隠滅: ファイル削除) | 4 |
Lateral Movement(水平移動・内部活動) | T1210:Exploitation of Remote Services(リモートサービス不正使用) | |
Persistence(永続化) | T1053.003:Scheduled Task/Job: Cron(タスク・ジョブスケジュール: Cron) |
先日トレンドマイクロは、クロスレイヤの検知と対応(XDR)機能を搭載する脅威防御のプラットフォーム「Trend Micro Vision One™」を用いて、ランサムウェア「BlackCat」の背後にいる攻撃者グループに関連する事例を調査しました。ランサムウェア「BlackCat(別称:AlphaVM / AlphaV)」は、プログラミング言語「Rust」で作成されているほか、ランサムウェアをサービス化して提供するビジネスモデル「Ransomware as a Service(RaaS)」のもとで運用されているランサムウェアファミリの一つです。トレンドマイクロのデータによれば、BlackCatランサムウェアは主にサードパーティ製のフレームワークやツール群(Cobalt Strikeなど)を介して配信されているほか、侵入口として脆弱な公開アプリ(Microsoft Exchange Serverなど)を悪用することがわかっています。
続きを読む暗号資産のマイニングを行う攻撃者は、より多くの利益を得るため、脆弱な端末にマルウェアを感染させる方法を常に探し求めています。特にさまざまな種類のオペレーティングシステムに存在する脆弱性が悪用するケースがよく確認されます。今回、トレンドマイクロでは、脆弱性「Spring4Shell」(CVE-2022-22965)がコインマイナーの攻撃に悪用される事例を確認しました。この脆弱性はJava Development Kit バージョン9以降で動作するSpring MVC(model-view-controller)およびWebFluxアプリケーションに存在するリモートコード実行に関するもので、ボットネットMiraiの活動での悪用も確認されています。
続きを読むトレンドマイクロでは、2021年の1年間に確認した、日本国内における「標的型攻撃」に関しての分析を行いました。ネットワークに侵入する攻撃は、法人組織にとっては深刻な被害につながりかねない危険な存在です。またこの危険な攻撃の背後には、一般に「State-Sponsored」などと呼ばれる国家や政府との関連が推測される攻撃者の存在が見え隠れします。攻撃者は標的組織が持つセキュリティ上の弱点を見逃さず、彼らにとって最も適した攻撃手法を用いて侵入を試みます。
