すべてをつなぐインターネット(IoE):スマートメータの導入

「すべてをつなぐインターネット(IoE)」もしくは「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」の中で、最も広く認知されているのは個人ユーザ向けのウェアラブル技術ですが、IOE の中で、最も幅広く利用されているのは、スマートメータかもしれません。

スマートメータとは、具体的にどういうものでしょうか。スマートメータとは、電気やガス、水道など、それぞれの使用量を記録し、双方向の通信手段を用いて各公益事業会社に情報を送信する計測器のことです。こうした通信手段には、通信機能を持った端末同士が相互通信を行う無線のメッシュネットワークや、電力線通信利用のネットワーク、ユーザが利用するインターネットサービスへの接続が含まれます。単純な住宅監視システムとは違い、スマートメータは、収集した情報を遠隔の各公益事業会社に送信することができます。

1つのスマートメータだけでは、その能力を発揮することができません。しかし、ある地域の計測器の大多数がスマートメータになれば、公益事業会社は大きな利益を上げることができます。つまり、膨大な数のスマートメータから集められた追加の情報によって、公益事業会社は必要に応じてサービスを調整し、サービスの効率性、信頼性、費用、持続性を向上させることができます。

■スマートメータの設置と利用
スマートメータは、どんな他のものよりも理論的だと考える人もいるかもしれません。しかし、すでにいくつかの国ではスマートメータが広く使用されており、数年後には、スマートメータがもっと幅広く普及していることを容易に目にするでしょう。

私のよく知っている世界、ヨーロッパの話をしましょう。イタリアのかつて独占企業であった大手電力会社「Enel」は、およそ 3,600万人の顧客のほぼすべてに対してスマートメータを設置しました。さらに Enel は、「Telegestore」として知られる遠隔管理システムを配備し、実際に各家庭を訪問するかわりに、スマートメータを通じて作業ができるようにしました。3億3,000万件の電力量計測と、100万件以上のその他の作業が遠隔で行なわれ、Enel と顧客の双方に利便性をもたらしました。Enel はまた、スペインの電力会社「Endesa」の株の 92% を保有しており、スペインでも類似のスマートメータを設置しています。

イタリアやスペインだけが、スマートメータの採用を先導する国ではありません。欧州連合(EU)の中で、スマートメータの採用に積極的かつ法的整備も整った「dynamic mover」と呼ばれる国々には、エストニア、フィンランド、フランス、アイルランド、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、スウェーデン、英国が含まれています。これらの国々では、規制機関および公益事業会社ともに、スマートメータの採用を進めるための必要な手続きにとりかかっています。

■技術規格とリスク
さまざまな業界団体が、スマートメータの技術を促進しています。これは、スマートメータがさまざまな方法で設置され、利用されることを反映しています。つまり、適用が異なれば、それぞれに異なる技術が必要になるかもしれないということです。これはさまざまな技術規格がスマートメータに使用されるということにもなります。

ホームオートメーションの機器やインターネットのルータなどその他の特定分野の機器には、深刻なセキュリティの問題があることがわかっています。照明スイッチに脆弱性が存在するのと、電力量計や制御装置に脆弱性が存在するのは別の問題です。スマートメータやスマートグリッド(次世代送電網)はまだ十分なテストがされておらず、起こりうるセキュリティ上の問題は十分に調査されていません。そのため、トレンドマイクロでは、避けられない状況も含め、これらの機器に不具合が見つかった際に想定されるシナリオを検討する必要があると考えています。

下記の動画では、想定されるシナリオを取り上げています。本ブログでは今後、このようなシナリオを詳細に検証し、こうした問題につながる状況について考察していきます。

参考記事:

  • Introduction to Smart Meters
    by Rainer Link (Senior Threat Researcher)
  •  翻訳:品川 暁子(Core Technology Marketing, TrendLabs)