法執行機関による「ディープWeb」の捜査困難の理由の1つは資金不足

2016年7月だけでも、ドイツ国内でミュンヘン銃撃事件および同国南部アンスバッハ自爆テロ事件が発生しました。こうしたことから、人々は同国内のセキュリティに不安を抱えるようになっています。そして、これら事件の容疑者たちはどのようにして武器を手に入れたのだろうか、という疑問が浮かび上がってきます。

7月22日に発生したミュンヘン銃撃事件に関して、容疑者は、事件に利用した自動拳銃グロック17をアンダーグラウンド市場で入手していました。トレンドマイクロは、アンダーグラウンド市場について、ドイツの日刊経済新聞「Handelblatt」によるインタビューを受けました。

容疑者がインターネットで武器を購入できたことは、驚きではありません。「Deep Web(ディープWeb)」にある市場の Webサイトを見つけてアクセスすることは、心得ている者にとってそれほど難しくありません。もちろん、ディープWeb 上の広告は誇大広告であったり詐欺であったりする場合もありますが、犯罪者でもテロリストでも慎重に選択することで目当ての違法商品を入手することができます。

そのような Webサイトの監視および調査の重要性は明白ですが、次に、なぜ警察が監視および調査しないのだろうか、という質問がでてくるでしょう。ここで理解すべきは、法執行機関は努力していないわけではなく、現実問題として、警察等法執行機関に十分な予算がないのが理由の1つです。警察が犯罪者を捕まえるための予算を無限に持っていると考えるかもしれません。その推測が間違っているわけではありませんが、サイバー犯罪に関しては、当てはまりません。

法執行機関の多くは、取り締まるべきディープWeb を監視および捜査するための専門知識も予算も人員も有していません。違法なオンライン活動が拡大するにつれ、犯罪を解決するためにはそのような取り組みがより重要になっているにも関わらず、できていないのが現状です。法執行機関はディープWeb を取り締まりたいと願っていても、世界中の法執行機関のサイバー犯罪の部門で必要とする資金や人員が不足しています。

ディープWeb 自体を禁止するか、もしくは厳しい監視下に置くべきと考える政治家もいます。しかし、そのような意見は短期的かつ短絡的であり、現実的ではありません。ディープWeb は本来有害なものではありません。匿名性はインターネットにおいて必要な要素です。例えばディープWeb は、独裁的な政治体制の下で生活をしている反政府活動家にとっては大変有用です。ディープWeb についての本質的な良し悪しというものはなく、それはインターネットに存在する1つのツールまたはプラットフォームでしかありません。

法執行機関は、サイバー犯罪におけるディープWeb の重要性について気付いており、ディープWeb を監視および調査するために不足している知識や技能を埋めようと尽力しています。とはいえ、現時点では民間企業がその方面で先行しています。法執行機関とリサーチャーがこの分野で連携することは、双方の利益となります。

弊社は、世界各地の法執行機関がディープWeb を監視できるよう支援しています。弊社が協働している法執行機関には、連邦刑事局および州刑事局も含まれ、そのうちいくつかでは最近の事件の捜査が行われています。法執行機関によるオンライン活動の捜査が、オフラインで行われる犯罪の捜査と同じくらいの効率でできる技能育成のために、弊社はいかなる法執行機関とも協力してゆくことを決意しています。

弊社では、ディープweb や各国のアンダーグラウンド市場についてのリサーチペーパーを公開しています。詳細は、こちらをご参照ください。

参考記事:

翻訳:室賀 美和(Core Technology Marketing, TrendLabs)