本ブログでは日本における 2016年個人と法人の三大脅威について、連載形式で解説しております。第 3回の今回は、特に個人利用者に関係する脅威としてモバイルを狙う脅威について解説します。国内でのモバイルを狙う脅威はこの 2016年に 1つの転換点を迎えたと言えます。
図1:2016年国内の個人と法人における三大脅威
「2016年の主要なサイバーセキュリティ事例を振り返る」と題し、今年一年に発生した主要なセキュリティ事例を 2回に分けて報告しています。第1回では、「最も持続可能なサイバー犯罪:ランサムウェアによる攻撃」、「Yahoo! を襲った史上最大の情報漏えい」、「Microsoft の月例修正プログラムのリリース数が最大に」、「予期しなかった Apple製品のゼロデイ脆弱性」、「絶えることのない Adobe Flash Player の脆弱性」についてお伝えしました。第2回の今回は、以下について報告します。
2016年も残すことわずか10日となりました。2016年を振り返ると、加速するランサムウェアの脅威について第3四半期の脅威動向で報告しました。また、直近では、12月15日(米国時間)、 今年 2回目のYahoo の情報漏えい事例が明らかになったところです。今回、2回に分けて、2016年に発生した主要なセキュリティ事例について振り返ります。
あなたの所属する組織は、サイバー攻撃にさらされた時、適切なインシデント対応が行えるでしょうか?組織のセキュリティ担当の方も、そうでない方も、考えてみてください。自分がセキュリティ担当者だった場合には、実情はよくお判りでしょう。一般の職員の方でも、自組織では最低限の準備がとられているのかどうかを判定できる方法があります。それは例えば、自分が標的型メールの添付ファイルを開いてしまった時、どこに連絡すればいいのかを知っているか、どうか?です。
「インシデント」は非常に幅広い言葉であり、その具体的な被害内容は多岐にわたります。中でも特に、自組織での迅速かつ適切な対応が重要なものとして、ネットワークへの脅威の侵入があります。2015年に発生した年金事業者の被害事例、そして 2016年に発生した大手旅行会社の被害事例など、組織内ネットワークに脅威が侵入したことから組織が持つ情報が侵害された多くの事例が発覚しています。このような被害事例の中でも、2015年以降にトレンドマイクロが対応した事例の 9割近くで、組織のネットワーク内部から外部への「不審な通信」を外部から指摘されたことがインシデント発覚の発端になっています。内部から外部への不審な通信の存在は、自組織のネットワーク内に何らかの脅威が侵入した可能性が高い状況を表す「被害の兆候」です。このような被害の兆候について、多くの被害事例では外部からの指摘で気づいており、自身で気づけた組織は少ないことがわかります。外部から指摘されたにせよ自身で気づけたにせよ、自組織ネットワークへ脅威が侵入した可能性に気づいた場合に、組織として「インシデント対応」の実施が必要です。
2016年10月18日、「割賦販売法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第192回臨時国会に提出されることになりました。この改正法律案には、クレジットカード情報の適切な管理、販売業者に対する管理強化、FinTech(フィンテック)の更なる参入を見据えた環境整備、特定商取引法の改正に対応するための措置といった、大きく 4つの項目が盛り込まれています。クレジットカード情報を狙ったサイバー犯罪が横行する中で大きな動きの一つとなりそうです。
今回の改正案の中でも特に注目すべきが、「クレジットカード情報の適切な管理等」のポイントです。これは、クレジットカード情報の漏えい対策や、決済端末の ICチップ付きクレジットカード対応といった、クレジットカード情報の適切な管理ならびに不正使用の防止を販売業者に対して義務付けるというものです。これらの対応が必要とされる背景には、クレジットカード情報の窃取や不正使用といったサイバー犯罪の世界的な増加があります。
今月公開した記事にもある通り、クレジットカード情報を窃取するサイバー犯罪の一つには、ECサイトのようなクレジットカード情報を処理、保持する企業やシステムを狙った脅威があります。もう一つは、小売業など店頭でクレジットカードを取り扱う企業やシステムを狙ったサイバー犯罪です。クレジットカード決済やネットショッピングの世界的な普及に伴い、クレジットカード情報の窃取や偽造カードによる不正な決済といった犯罪の防止は、クレジットカードを取り扱うすべての事業者に求められるものになっています。
続きを読む2015年に発生した年金受給者に関する個人情報漏えい事故や、2016年に入って発生した旅行予約者に関する個人情報漏えい事故は、知名度の高い組織が標的型サイバー攻撃に遭ったことと、漏えいした可能性のある個人情報の量と種類も要因となり大きく報道を賑わせました。トレンドマイクロでは、日本国内の民間企業や官公庁自治体におけるセキュリティインシデントや対策の実態を把握する目的で、「法人組織におけるセキュリティ対策実態調査 2016年版」調査を実施しました。
調査の結果、国内の法人組織の実に 38.5%が「個人情報の漏えい」や「生産・操業停止」など、ビジネスに影響を及ぼす「深刻なセキュリティインシデント」を 2015年一年間に経験したと回答しました。「社員情報の漏えい(23.3%)」や「顧客情報の漏えい(19.4%)」に代表されるように、保有する個人情報が多くの法人組織で漏えいしていることが分かります(図1)。また近年急速な勢いで深刻な問題になっているランサムウェアによるものと考えられるデータ破壊など、実に様々な深刻な被害が発生していることが明らかになりました。